コツブログ -2歳とパリ編-

いろいろなコツを書くブログ。まずは、2歳児と海外旅行へ行ってみます。

【パリ調】都市の景観、日本とフランスの根本的な違い

パリの街並みは統一されていて美しいな、と思うのは、共通意見だと思っています。

日本のごちゃっとした街並みとは大違い。
なんでこんなにバラバラな街並みが続くのか、と都市と見てげんなりするかと思うと、ミニ開発で同じような建物が延々と続く住宅街をみても、ハリボテ感にうんざり…。

パリはなんで昔からの街並みを今でも維持し続けられるのか、興味があるので調べてみました。

日本とフランス、そもそもの都市の違い

ヨーロッパの都市は、外敵から身を守るために都市が壁で囲まれていることが多いようです。
都市壁の中は都市、都市壁の外は農村、と明確に区別されていました。
都市壁の内側にしか建物を建てられないので、効率的に建物を建てようとすると、必然的に境界壁を共有して、道路に面して外壁を接して建てることになります。
結果、街路に対して建物が連続し、それが統一された景観を作り出す要因の一つとなっています。

一方、日本は長屋は別として、建物は敷地に独立して建てられるため外壁の位置は統一されないのが普通です。
都市壁もないので、都市は広がり放題。

簡単な図にしてみました。

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敷地境界線なんて普通は見えないので(塀は別として)、建物の外壁だけをみるとどうしても凸凹してしまいます。
そんな都市の成り立ちの違いから、ヨーロッパの都市は揃いやすく、日本の都市は不揃いになりやすい、という前提が生まれています。

 

パリにも再開発の危機はあった

フランスでも、第二次世界対戦が終わって戦地や旧植民地から人が引き上げてきたことから、住宅不足が深刻化して大量の住宅建設が求められたようです。
また、近代化があらゆる方面で叫ばれたため、建築や都市計画の分野でも近代都市計画の理論や手法が導入され、郊外に大規模な団地が建設されました。
その流れで、パリでもイタリー地区、ボーグルネル地区、モンパルナス地区などで全面刷新型の都市開発が行われたようです。
この結果、パリにあった多くの古い建物が取り壊され、不調和な街並みが建設されました。
ここで、日本だとそのまま経済活動優先で歯止めがきかなくなるのに、フランスの場合は市民からの反対と文化的な価値への理解から、再開発がストップされる流れとなりました。
そこから多くの試行錯誤を経て、歴史的な街並みは保全・再生し、郊外に新都市を建設することで現在のパリの街並みが守り続けられています。

 

建築に対する日仏の違い

学生時代、フランスの街並みのことを調べていて、一番衝撃を受けたのが法律の違いでした。

フランスの「建築に関する法律」第一条。

建築は文化の表現である。建築の創造、建設の質、これらを環境に調和させること、自然景観や都市景観あるいは文化遺産の尊重、これらは公益である。

一方、日本の「建築基準法」第二条第1項。

土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

文化を高らかに謳うフランスと、実用的な定義一点張りの日本。
なんというか、レベルが違うというか、国民の「建築」という物に対する意識の違いが明確に現れているのを知ってびっくりしたことを覚えています。
日本の都市は便利で清潔で刺激的ではありますが、もう少し、文化とか歴史とかを尊重した落ち着いた街並みにはならないものか、と当時考えていたこともあって、そもそもの国の定義からして宿命なのかも、と諦めにも似た気持ちになりました。

日本では、都市計画法でも建築基準法でも、文化、歴史、伝統の語はほとんど出てきません。
ついでに一級建築士の試験では、「景観」に関わる問題は皆無、「歴史」に関わる問題も多くても1〜2問しか出ないので、建築史や文化を学ばないまま、一級建築士になれてしまいます。

私もその一員なのでなんとも言えないですが、日本の建築家は自分の好きな(奇抜な)建物をどうやって作るかに注目し、周りの景観との調和は考えず、緑を植えておけば間違いなし!ということでどんどん混沌とした街が広がっている気がします。
調和させよう!と頑張っても、様々な法律や条例にがんじがらめになって、不完全燃焼な建物になってしまったり。
でもそのおかげで、発想力豊かな建築家が多く生まれ、日本の建築家が世界的に有名になり、活躍しているという恩恵もあるとは思いますが…。

 

ということで、日仏の違いについて批判的な感じなってしまいましたが、思うところを書いてみました。
またまた結論なしの記事となりました。

そんな「文化的な」フランスですが、何の努力もせずに街並みが保たれているわけではないようです。
次回【パリ調】、景観を保つ合理的な仕組みにについて書いてみたいと思います。



 

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ありがとうございました。